幻杯用イラスト-復元3.jpg

はじめに

記念すべき初開催から早一年。今回で第二回となる幻杯には、前回の11作品を大きく上回る19作品が寄せられました。様々なコンテストが多数並行して開催される昨今ですが、厳しいスケジュールの中でこれほど多くの作品が当コンテストへ寄せられた事を審査員一同非常に嬉しく思います。

さて、お題となる一枚絵はイラストレーターの幻が新たに書き下ろしたもので、執筆の手掛かりとなる仕掛けが随所に施されていました。寄せられた作品にはそれらを巧みに駆使しつつ独自の世界観を織り交ぜた、創作意欲の高い作品が非常に多かった印象です。読み手の心を掴む文学作品、丁寧に設定の練られたファンタジー作品、一風変わったホラー作品、他にも熱のこもった力作が多数あり、選考は非常に難航しました。その為に結果の発表が遅れてしまい申し訳ありませんでした。ですがその遅らせた分、審査員二人ともに納得が行く審査ができたと自負しています。

また、今回は優れた作品が非常に多かったため特別賞も用意しました。

では最終選考結果を選評と共に発表致します。

【最優秀賞(1作品)】

金犀 『この絵の手前に僕がいる』

この絵の手前に僕がいる

お題となるイラストに描かれた女性を見ている「僕」の立ち位置にスポットライトを当てた作品。大雨警報が発令される中、踊り始めた美琴を必死に描き出しながら、主人公は自分自身の立ち位置に気づきます。

自由奔放で嵐のような性格をした彼女に主人公は振り回されますが、自分の気持ちに晴れ間が差したラストシーンは、まさに今回のお題にピッタリだと思いました。熱量溢れるストーリーにも、ぐっと引き込まれます。最優秀賞にふさわしい素敵な作品でした。

【優秀賞(2作品)】

まつこみ『夢と知りせば』

夢と知りせば

寄せられた作品の中でも特に文章表現が繊細で素晴らしかったです。作品全体からまるで雨の匂いが実際に香ってくるようで、その強弱を通して大崎すみれという女性の存在を感じ取る事が出来ました。新城とすみれの軽妙なやり取りの中にも、読者へ強く訴えかけてくる台詞が多かったです。

また、イラストは「ある一瞬を切り取る」という側面があると思いますが、最後の一文とラストシーンでの二人の心情を考えてみれば、陽の差したイラストとの親和性も非常に高かったように思います。

天野つばめ『あやかしは雨と踊る』

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今回は割りと少なめだったファンタジー作品ですが、この作品は非常に良く設定が練られており、まずはそこに唸らされました。

人魚、妖術、不老不死、百鬼夜行――あのイラストからここまで発想を飛ばせるのも驚きですが、全ての要素が無理なくストーリーへ溶け込んでいます。イラストの中にある非常に小さい飛行物体を作品のキーポイントとして利用する手腕も見事でした。全体としてみた時に、完成度が非常に高かったです。

【特別賞(4作品)】

葉一朗『私、雨』

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主人公にとってネガティブな存在である雨が、友人の存在によってポジティブな方向へと変わっていく瞬間を捉えた綺麗な作品です。

西野 夏葉『舞台装置』

舞台装置/西野 夏葉

「ゼロ」か「たくさん」。命が、雨粒が、人間が。イラストに対してそんな独創性のある解釈で深く切り込んでいった、とても力強さを感じさせる作品です。

胡麻和え『ここにいるのは』

ここにいるのは

難しいテーマを見事に作品に組み入れてあり、特に読み応えのあるストーリーの部分で非常に評価が高かったです。

知瀬 三國『The Dancer』

The Dancer | 5分で読める短編小説投稿サイト - Prologue(プロローグ)

言葉の扱い方が非常に巧みで、情景描写の美しさや心理描写の繊細さが特に際立っていました。

以上の4作品は、受賞作品と比べても甲乙つけがたい力作揃いでした。埋もれさせてしまうのがどうしても惜しいという事で、幻と秋山で相談した結果、新たに特別賞という形でコメントを一言添えるだけでも出来ないか、という流れになり急遽用意する運びとなりました。どれもお題のイラストに対しての解釈が美しかったり斬新だったりして、親和性も非常に高かったように思います。

【応募作品】

雪月海桜『くるり。』

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黒井羊太『交差点にて』

交差点にて/黒井羊太@短編

羽夜『僕だけが知っている、僕たちの奇跡』

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howari『喪服で駆ける。』

喪服で駆ける。

はの『夜は踊る』

夜は踊る | 5分で読める短編小説投稿サイト - Prologue(プロローグ)

奈良ひさぎ『心の雲、自由の雨』

群鳥安民『白姫逃亡凭譚 ~白魔の嫌疑が霽れるまで~

白姫逃亡譚 ~白魔の嫌疑が霽れるまで~

葵野楓『空蝉』

空蝉